<例えばクライスラーやアマゾンがいくらテレビCMを流しても、企業の善意は額面どおりには受け取れない。だが新型コロナ危機に際し、フィランソロピーが本格化し始めた。本誌は「グッドカンパニー50」特集を組み、世界と日本から特筆すべき企業50社を紹介する>
企業の善意は、額面どおりには受け取れない。例えばクライスラーのCMは新型コロナウイルス危機を一緒に乗り越えようと呼び掛けるが、その意味するところは「当社の車を買ってくれ」だ。当社の倉庫で働く人の安全は守られているとアマゾンのCMは強調するが、従業員中の感染者(そして死亡者)数はずいぶん前から伏せられている。
しかし、この未曽有の危機に際して本気で善意を見せ、独創的なフィランソロピー(企業の社会貢献)活動に取り組む企業もある。
もちろん、これには長い前史がある。昔の社会貢献活動は「もっぱら社長にオペラ観劇の特等席を用意するための手段だった」と言うのは、CECP(企業目的を重視する経営者たち)の代表を務めるダリル・ブリュースターだ。
しかし、ここ数年で状況は一変した。今は消費者も従業員も「もっと社会貢献を」と企業に求めている。そこへやって来たのが新型コロナウイルスの感染爆発だ。
米インディアナ大学のリリー家記念フィランソロピー大学院のドワイト・バーリンゲーム教授によれば、企業が「慈善事業に使う金は自分たちのためになると気付いたのは、ここ10年か15年のこと」だ。
そうした考え方は、今ではCSR(企業の社会的責任)と呼ばれている。企業が何を作り、何を売るかだけでなく、何を考えて活動しているかを問い直す。それがCSRの基本であり、そこでいや応なく注目されるのが企業戦略としてのフィランソロピーということになる。
ブリュースターによれば、アメリカ企業による慈善事業への寄付は年間260億ドルに上る。それでも純利益の1%弱(寄付金額上位25%の企業では2%弱)にすぎず、何かを変えるにはまだ少な過ぎるという指摘もある。『正しい寄付(Giving Done Right)』の著者フィル・ブキャナンも「株主への利益還元が善意に勝つ」現状では企業の社会貢献も「うわべだけ」だと批判する。
困窮するレストランと人々を結ぶ団体ワールド・セントラル・キッチン HILTON& AMEX
そうは言っても、経営者には株主への責任がある。会社の利益を最優先するのは経営者の法的義務だ。本来なら株主に還元すべき利益を別な目的に投じるのなら、それがいかにして会社の評判を上げ、顧客や就職志望者、さらには地域社会での評価を高めるかをきちんと株主に説明できなければならない。
だからたいていの会社は、自社の事業と関連のある分野に寄付金を出す。電機大手のシーメンスなら理工系の教育向上に資金を出すし、軍人向けの保険を扱うUSAAなら退役軍人の団体に寄付をする。
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