アメリカ大統領選の投開票日(11月3日)まであとわずかとなった。ニューヨークでも投票所での期日前投票が10月24日から11月1日まで行われており、投票所に並ぶ人々や投票を促すステッカーなどを見かける。
米各紙報道では、今年はすでに8000万人以上が期日前に投票をすませたという。(10月29日現在)
この数字は、4年前の合計の期日前投票数をすでにはるかに上回っている数字だ。このままいくと今年の投票率は、有権者人口の65%である約1億5000万人が期日前投票をすると予想され、この数字は100年ぶりの多さだという。
今年の大統領選がなぜこれほど期日前投票が盛り上がっているのかと言うと、1つは新型コロナウイルスの流行により、投票時の混雑を避けるためだ。もう1つは「トランプ」にまつわる人々の熱狂もしく反発心にあると、米メディアは見ている。トランプ支持者はもはや何が起きてもすでに気持ちは固まっているし、反トランプ派はトランプを大統領職から下ろすためにバイデンに気持ちは固まっている。それらが、投票所へ早々に行く動機付けになっている。
US Elections Projectの資料をもとにしたVox誌の記事によると、特に高い期日前投票率が見られるのは、スイング・ステーツと言われる激戦州だ。4年前の期日前投票率と比べて、テキサス州では94.1%の人が、ジョージア州では82.3%の人が、ノースキャロライナ州では81.1%の人が、フロリダ州では77.1%の人が、すでに今年は期日前投票済みという。
また同記事によると、期日前投票8000万票のうち多くは郵便投票によるもの。3分の2にあたる5000万票超が郵送で投票されたもので、投票所で期日前に投票されたのは2800万票超という。その8000万票のうち、49%は民主党派、41%は共和党派、10%はその他の無党派と、やや民主党派が上回る。
さらに今年の特徴として、「4年前に投票しなかった1600万人以上が今年は期日前投票をしている」と、調査会社「TargetSmart」のCEO、トム・ボニエ氏がVoxに語っている。1600万人の人々の中には高齢者らも含み、単に今年投票年齢に達した人だけを含んでいるようではないという。またそれらの新たな有権者の多くは民主党派で、人種はアジア系またはヒスパニック系である可能性が高いと同氏は述べている。
あくまでも11月3日が本番であり、筆者の知り合いも当日に投票するとしている人も多いため勝利の行方はまだわからぬが、今年の選挙がいかに盛り上がりを見せているかについては、このように数字として表れている。
「私への再投票も可」とトランプ氏
しかし、すでに投票した8000万人の中には、心変わりもあるようだ。
トランプ大統領は27日、このようなツイッターを投稿した。
「2回目の討論会が終わった後『Can I change my vote』(投票のやり直しができるか)という言葉がグーグル検索の上位に入っている。『これは私にやはり投票し直したい』という心変わりだ。ほとんどの州では『可能』だ。ぜひ(再投票)して欲しい。あなたの人生でもっとも重要な選挙!」
「Change my vote」(投票のやり直し)を検索した人は、グーグルによると「ハンター・バイデン」という言葉や関連情報も同様に検索しているという。しかしすでに投票した人の気持ちが変わり、再投票となると、投票結果の混乱も予想される。
混乱と言えば、郵便投票の複雑さも度々取り上げられている。郵送投票の開票処理を開始できているのはフロリダ州のような一部の州だけでmペンシルベニア州やウィスコンシン州など多くの州では、11月3日まで投票のカウントを開始できないなど、統一化されておらず、全米全体での、現時点でのトラフィックと各州の比較がしづらいシステムになっている。
さらに郵便投票の最大の懸念は、無効率の高さだ。投票用紙の署名が事前登録された有権者の署名と一致しない場合などは、その票が無効になることがあるといい、郵送による投票は通常、投票所での投票より無効率が高いという。また、あろうことかニュージャージー州やテキサス州など一部の州では、郵便局員(その後解雇)によって郵便投票が廃棄された事件も報告されている。
今年の投開票日は、いつにも増して混迷を極めそうだ。
(Text and some photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止
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