11月3日、アメリカ大統領選挙が行われる。共和党のトランプ大統領が再選するのか、民主党のバイデン前副大統領が政権を奪還するのか。政治アナリストの横江久美氏は「『トランプを支持する』と答えづらい政治状況があるから、世論調査はアテにならない」という――。
※本稿は、横江公美『隠れトランプのアメリカ コロナ感染から奇跡のカムバックでトランプが勝つ⁉』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
党派に関係なく「トランプが勝つ」という返事
今回の大統領選挙についてアメリカで取材をすると、党派に関係なく「トランプが勝つ」との返事が戻ってきた。世論調査ではバイデンが先行しながら、党派にも、年齢にも関係なくトランプの勝利を予想するアメリカ人が多かったのである。専門家であれば、2016年に予想を大きく外したことに対する反省かと思うが、リベラルな西海岸の大学生も苦い顔をしながら「トランプは思った以上に強い」と言っていた。
それが表に出てこないのは、「トランプを支持する」と口に出すのをためらわれる空気があるからだ。トランプの言動、そして人となりは、アメリカの大統領の資質ではない、というのはアメリカ人の共通認識である。それはわかっているけれどもトランプに投票してしまう人たちが数多く存在する。
どれだけトランプを非難する本が出版されようが、どれだけ共和党の元高官や政治家がトランプに反対する声をあげようが、どれだけ反トランプ動画を拡散させようが、トランプ支持者が“岩盤”であることを示している。反トランプキャンペーンは、アンチトランプの人が見ても、トランプが大好きな人たちの目には留まらない。
「隠れトランプ」が隠れるワケ
ここで疑問が生じる。トランプ好きの「トランピアン」がどのくらいいるのか、ということである。トランプの政策についての支持率はだいたい40%前後で安定している。高いときには50%を超えることもある。低いときでも33%を下回っていない。そうするとトランプの岩盤支持者は最低でも33%いて、その人たちが接戦州で投票すれば、トランプが勝利する可能性が高まる。
アメリカ大統領選挙における投票率はおおよそ60%である。そのうちの過半数を獲れば勝利となるため、有権者の30%強の得票で勝利できる。そうすると、バイデンの世論調査の数字は実態以上に大きく膨らんでいる可能性もある。まだ投票先を決めていない人もいるなかで行われる世論調査では、「『トランプ』と答えると格好悪いから、とりあえず、バイデンと答えておこう」という人も多い。
とはいえ、トランプの選挙集会を見ると、陰謀主義史観のマークを掲げる人はいるし、白人ばかりで人種差別主義者たちの集団にも見える。掛け声も驚きだ。「Lock him up(オバマを牢屋に入れろ)」と参加者たちは声を合わせて叫ぶ。この人たちと同じに見られたくないと思う人は、トランプに投票するとは答えにくいだろう。
アメリカ人と話をしていると、「この人、トランプ支持を隠しているな」と思うことがたびたびある。「政策については評価できる面もある」と言いながら、「トランプを支持していない」という人たちである。何が何でもトランプを支持するという熱狂的な30%強の中に、こうした隠れトランプがいる。
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