NHKが地元の方とタッグを組んで地域の農業を応援する「ミステリー×クッキング」。
前回こちらの記事で、青森局に続く第二弾として石川県・金沢局とコラボしている様子をお伝えしましたが、今回はその続き。宮崎県の食材を石川県に送って、新たなレシピを開発した様子をご紹介します。今回はどんな料理が誕生したんでしょうか?(アナウンサー 内藤雄介)
▼「宮崎の野菜」×「石川の学生」=「新レシピ」誕生
出来上がったのはコチラの2品。レシピは記事後半で!
今回のミステリー食材は?
ミステリー食材を求めて私が訪ねたのは、宮崎県綾町にある「綾 手づくりほんものセンター」。綾町産にこだわった新鮮な野菜や加工品が手に入るとあって、大勢の人でにぎわう人気スポットです。
今回、ミステリー食材を選んで下さったのは、ほんものセンターの小笠原寿治店長。綾町の野菜のことならなんでもご存じの小笠原さんのおススメは・・・
京いも!さといもの一種ですが、特徴はこの大きさ。長さは30センチ以上。重さが1キロ近くになるものも!!宮崎県が生産量日本一です。
県内で最も生産量が多いのは小林市。収穫した後2週間ほど土に埋めなおして余分な根っこなどを取り除き、形を整えてから出荷するんだそうです。
「京いも」という名前の由来は、JA小林によると、昭和30年頃に「この特徴ある品種を何とか県外の消費者にも届けたい」と、当時の農協、市役所、青果会社が一体となって、関西に売り込みに行ったのだそうです。その際、京都で食べた精進料理の中にとてもおいしい里芋があり、「この京都のいもにあやかりたい」との思いから付けたのだそうです。
2005年度はJA小林管内の出荷量がおよそ700トンありましたが、昨年度(2021年度)はおよそ70トンと十分の一にまで減っています。年々作る人が少なくなり、希少な芋になっています。
地元おススメの食べ方は「煮物料理」
小笠原店長は「おでん」。煮崩れしにくいため、煮込み料理に良く合うそう。写真はそれを聞いて私が作った煮物です。味が染みこむまでしっかり煮込んでも形が残り、存在感たっぷりの一品に仕上がりました。
石川県で京いもに挑むのは大学生
京いもを石川県に送り、受け取ってくれたのは金沢放送局の松岡忠幸アナウンサー。訪れたのは石川県立大学。こちらに今回の「新レシピ請負人」がいるようです。
松岡アナを待っていたのは、食品科学を学ぶ3人の学生・築山さん、吉田さん、山﨑さん。3人はなんと、「いしるサークル」に所属しているとのこと。吉田さんが部長を務めています。
「いしる」とは、石川県能登地方に古くから伝わる伝統の調味料。独特の風味と、うまみ成分たっぷりの味わいは、能登の料理に根付いています。
サークルでは、その魅力を発信する活動をしていて、様々な「いしる」を収集。和食から、洋食、スイーツに至るまで。日々新たな「いしる料理」を作っています。
今回、宮崎のミステリー食材との組み合わせでどんなレシピを生み出してくれるのでしょうか?
いよいよ「ミステリー食材」とご対面!
松岡アナが布をめくると、現れた「京いも」を前にビックリした声が上がりました。「タケノコみたい!」(持ってみて)「重くて中身が詰まっている」など、思い思いの驚きを表現した3人。これが里芋の一種だと知らされて、「見たことない」と更に驚いていました。彼らに与えられたミッションは、これを使って石川県らしいレシピを作ること。いよいよ、ミステリークッキングの始まりです!
「京いも」って、どんな芋?
まずは未知なる食材を知るところから。さっそく切ってみることに。包丁を当てると、カボチャを切っているような、かなりの硬さが!
何かに気付いたようです。
切り口に、里芋のような粘りが全くありません。「生で食べてみるか」とつぶやく吉田部長。
すると、「シャキシャキする」「甘味を奥に感じる」との感想。見た目から想像していたのとは違ったようです。これで勢いがついた3人。このあと「煮る」「焼く」「すりおろす」「揚げる」と様々な調理法に挑戦しては試食を繰り返します。すると・・・
「すりおろしたのがおいしかった」と山﨑さん。野菜をすりおろして作る加賀料理と言えば、あれがある!と吉田部長が閃きました。それがこちら。
加賀料理の一つ「はす蒸し」。はすとはレンコンのこと。すりおろしたレンコンを、魚介などと合わせて蒸したものです。今回はレンコンの代わりに「京いも」を使って作ることに。他にも、もう一品作ることを決め、合わせる食材を揃えました。
まずは「はす蒸し」づくり
試食段階で高評価だった、すりおろした京いもを作るところから始めた3人。調理工程は吉田部長がテキパキと指示を出します。聞くと、実家が味噌店を営んでいて、小さいころから発酵食品に親しみ、いろいろな料理も作っていたんだそう。
ここで松岡アナから素朴な疑問が。「このレシピの名前は?」。
ここまで軽快に動いていた吉田部長の手がピタリと止まりました。
やりとりの末、部長が閃いたネーミングは「京蒸し」!
すりおろしてふわふわの京いもに、いしる入りの出汁がからんで、うまみが口の中いっぱいに広がります。宮崎の京いもが、高級感のある加賀料理に大変身しました!
もう一品は、能登地方の冬にぴったり
もう一品は「いしる鍋」。ネギや焼き豆腐などの具材を、いしる入りの出汁で煮込んだものです。冬の能登地方でよく食べられていた、体が温まるご当地料理です。
焼いて香ばしさを引き出した「京いも」が上に飾られ、味付けにも一工夫しています。
いしると京いもを組み合わせた2品が出来上がりました!
そしてレシピは綾町へ
学生たちが作ったレシピを内藤が再現。綾 手づくりほんものセンターの小笠原店長に食べてもらいました。その様子を学生たちがオンラインで見つめます。
おいしいです!すりおろした京いもに独特の食感があって、芋とは思えないくらい高級感がありますね。
京いもをすりおろすと、食感がもちもちしている感じになって、すごくおいしいと思います。
続いて「いしる鍋」を食べてもらいました。
鍋の出汁が、いしるが加わることで大変深い味わいとなって、これまたすごくおいしいです。京芋を焼いているっているのが、これまでにない感じですね。
先ほどの「京蒸し」と比べるといしるがより強調された味になっているかと思いますが、そういうところでもまた別のおいしさがあるのではと思います。焼くと香ばしさが出て甘味が強くなるというのに気が付いたので、一緒に盛り付けてみました。
小笠原店長、いしるを気に入る
生まれて初めていしるを使った料理を食べた小笠原店長。いしるのことがとても気に入ったようです。
こんなに深い味がでる調味料とは知りませんでした。もっと早く出会っていればよかったなぁと思うくらいですね。
宮崎では煮物料理が中心だった京いも。「ミステリー×クッキング」をきっかけに、新たな食べ方が生まれました。石川県立大学の学生さんたち、ありがとうございました!
京いも“新レシピ”作り方
京いもの「京蒸し」
材料(1人分)
京芋 50g
タラ 20g
エビ 1/4尾
銀杏 4個
しめじ 3本
みつば 適量
【調味料A】
卵白 1/4個
片栗粉 小さじ1.5
【調味料B】
だし 100mL
みりん 小さじ1
塩 ひとつまみ
いしる 小さじ1/2
水溶き片栗粉 適量
作り方
1.京芋の手順
皮をむいて幅1cm程度に切る
水1Lに対して塩を小さじ1ほど(分量外)入れ、沸騰したら京芋を入れて3分ほど煮る
ざるにあけて流水で粗熱を取り、その後水分を除く
ゆでた京芋をすりおろし、出てきた水分をキッチンペーパーなどで切る
水分がある程度無くなったら【調味料A】を加えてよく混ぜる
2.その他の具材の手順
エビとしめじをある程度の大きさに切り、下ゆで。銀杏もゆでておく。
タラを酒と塩で下味をつける
3.蒸す
②の具材を器に盛りつける
①で作った京芋のタネをできるだけ丸くなるように盛り付ける
蒸気のたっている蒸し器に入れて3~5分程度待つ
4.だしの作成
【調味料B】の水溶き片栗粉以外を合わせて沸騰させる
軽くとろみがつくように水溶き片栗粉を入れて火を止める
蒸しあがった器にだしをかけ、みつばを添えたら完成
京いもの「いしる鍋」
材料(5人分)
白菜 400g
大根 1/2本
京芋 400g
ネギ 2本
結びしらたき 1袋
焼き豆腐 1丁
しいたけ 4株
エノキ 100g
イカ 200g
いしる 50mL
だし 700mL
酒 大さじ3
柚子 適量
作り方
1.具材の下ごしらえ
白菜を適度な大きさに切る
大根を半月切り、ネギを3cmの幅で切る
ネギを両面焼く
京芋を幅1cmに切り、水1Lに対して塩を小さじ1杯入れたお湯で下ゆでする
京芋を半月切りにし、半分200gを両面焼く
シイタケ、エノキは石づきを取る
イカは食べやすい大きさに切る
豆腐は8等分する
2.煮る
だし、いしる、酒を入れて、大根と焼いていない分の京芋を入れて煮る
ある程度煮えたらイカ、キノコ類を入れる
白菜、ネギ、しらたき、豆腐を入れて、火が通ったら盛り付ける
焼いた京芋をのせて、柚子の皮を刻んで上に散らせば完成
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